北部訓練場返還地の米軍廃棄物に関する政府対応についての声明

2022年8月29日

 2016年12月22日、沖縄県東村ならびに国頭村にまたがる米海兵隊「北部訓練場」の一部、約四千ヘクタールが米国から返還されました(以下「返還地」といいます)。

 これをうけて沖縄防衛局は、1年程度の時間をかけ、返還地の使用履歴を文献などで調べる「資料等調査」を実施するなどして、土壌や水質の汚染、残置された米軍のものと思われる不発弾や廃棄物などを撤去する支障除去を行い、2017年12月25日に返還地が地権者に引き渡されました。

 しかし、返還地では、その後も米軍のものと見られる空包や薬きょう、廃タイヤ、ドラム缶など多数の廃棄物(以下「米軍廃棄物」と記す)が発見されている他、米軍廃棄物が残置されていた土壌から有害なポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」と記す)が検出されるなど土壌汚染も確認されています(「琉球新報」2019年3月9日の報道など)。

 これら返還地における米軍廃棄物や土壌汚染については、新聞やテレビなどでも報じられている他、返還地が世界自然遺産登録されたことから、環境問題としても問題視され、国会審議などでも取り上げられており(2018年5月17日参議院外交防衛委員会での伊波洋一議員と小野寺五典元防衛大臣のやり取りなど)、返還地において米軍廃棄物が残置していることは、政府も一定の事実は認めています(2018年1月31日提出の糸数慶子参議院議員「米軍北部訓練場の返還跡地の支障除去等に関する質問主意書」に対する2018年2月9日付「答弁書」など)。

 そうしたなか、2020年10月25日、沖縄県国頭村安田の返還地内のFBJヘリパッド跡地の茂みから、付近住民(以下「発見者」といいます)が放射性物質「コバルト60」を含む通信機器の機材であるTR管(型番1B63A)19個を発見しました。また、このTR管に付着していた布もしくは紙のようなものから、PCBが検出されました。言うまでもなく、このような危険な物品の投棄は、関係法令に抵触する犯罪です。

 本件は大きく報道されましたが(「琉球新報」2020年12月16日など)、2020年10月6日、沖縄防衛局の指示のもと、FBJヘリパッド跡地に投棄されていた米軍廃棄物であるライナープレートの撤去作業をしていた業者がTR管を発見し、業者からその旨報告をうけた沖縄防衛局がTR管の撤去を検討していたと報じられています(「琉球新報」2020年12月18日)。沖縄防衛局は2020年10月にはTR管の存在を認識し、また撤去を検討していながら、2ヵ月以上放置してきたということになります。

TR管が発見された場所の周辺には小川やダムが存在しており、これらは沖縄県内全域をまかなう重要な水源となっています。本件も含め、返還地における米軍廃棄物や土壌汚染の問題は、自然や人体への重大な影響という意味でも大きな問題です。

 そうした懸念も含め、私たちは防衛省に赴き、防衛大臣に宛てて「北部訓練場返還地における米軍の廃棄物について、あらためて調査し、撤去など必要な措置を取ること」との趣旨の要望を再三に渡り申し入れてきましたが、回答の一部は、「今後も新たに廃棄物等が発見された場合には跡地利用に支障がきたすことがないよう土地所有者及び関係機関と調整し、適切に対応して参ります」というものです。しかし、本件のTR管ほか大量の銃弾や空包などについてもいまだ返還地に放置されたままであり、適切な対応とは言い難いと考えます。日本政府はこうした状況を一刻も早く改善・対応するよう要請致します。